Q1.患者様の人生に深く関わる透析の看護。透析看護師に求められる姿勢とは
- 熊澤
- 透析治療はルーチン化している業務もあるため、機械的なイメージをもたれることがありますが、それは違います。基本的に透析治療は始めたら、一生付き合っていくことになり、患者様にとって週3回行う透析治療は「日常生活」となります。その「日常生活」である透析医療だからこそ、私たち偕行会グループの透析看護師は「患者様中心の看護」を目標にしています。「患者様中心の看護」とは、一人ひとりで違う性格や環境、背景を少しでも理解し、その患者様にとって何が大切なのか(プライオリティ)を尊重することだと考えています。日々の業務に追われることもありますが、偕行会グループの透析看護師は、「一人ひとりの患者様に向き合い、長い目で見たときに患者のためになることを提案していく」これを大切にしています。
- 後藤
- 患者様本人だけでなく、生活を支えているご家族や介護施設のスタッフとの関係も大切となります。これらを全て把握することは非常に難しいことではありますが、日々のカンファレンスなどで、情報を共有し、医師をはじめとしたスタッフみんなで、その患者様にとって良い看護・治療を話し合う環境を構築しています。また、患者様がご家族に対して言いにくいことでもでも、看護師ならば伝えやすいこともあります。透析生活がより良くなるように、看護師が橋渡しをすることを心がけています。
Q2.偕行会グループが力を入れている合併症対策。幅広い分野に対応するためには
- 熊澤
- 透析クリニックのスタッフは看護師の割合が大きくなりますが、看護師以外にも多くの職種のスタッフが関わっています。例えば、臨床工学技士は、患者様の透析効率など様々な項目を検証し、患者様に合った透析方法やダイアライザーの選択をおこなってくれていますね。偕行会グループは、各クリニックにメディケアワーカー(看護助手)が配置され、管理栄養士・臨床検査技師・診療放射線技師・医療ソーシャルワーカー(MSW)・理学療法士らが、複数施設を巡回し患者様を診ています。ここまで多くの職種が介入していることは偕行会グループの特色といえます。各職種の専門性は尊重し、日々のケアを看護師やメディケアワーカー(看護助手)が行うことで、幅広い合併症対策に向き合っています。
- 後藤
- 透析技術の発達により、透析患者様の平均年齢も高くなっています。患者様自身での自立した生活が難しくなると、自宅での介助などが必要になります。現在は多くの社会保障制度や福祉サービスがあり、患者様自身は勿論、看護師でも把握しきれないことは多々あります。そのような場面では、MSWが介入し、心理面・社会面からサポートをしています。透析だけでなく、生活までフォローを行うことは、患者様に寄り添った看護が実現できていると感じます。他にも管理栄養士は、患者様一人ひとりの状態をプリントにまとめ、看護師からの疑問にも丁寧に回答してくれます。偕行会の透析は、職種間の連携がないと成り立ちません。
Q3.透析の枠にとらわれず総合的な医療を提供している偕行会グループ。
今後、取り組んでいくことは
- 熊澤
- 技術は日々進化していきますが、「人による看護」が重要なことは変わりません。そういった面では、ACP※1を更に推進していきたいです。患者様が望む人生の最後だけでなく、どのような人なのか、何を大切にしているのか看護師が知ることが大事だと考えています。例えば、「長生きしたい」という希望。その理由に「お孫さんと一緒に生きたい」という思いがあるならば、患者様の気持ちに寄り添った指導ができます。ゆくゆくは偕行会流の人生ノートを作りたいですね。このACPに関する取り組みをきっかけとし、スタッフが患者様と向き合う機会となればと思います。透析看護は「缶詰ではなく、びん詰め」。缶詰めは表面だけしか見えませんが、びん詰であれば中身まで見えます。うわべだけでなく、患者様が本当に思っていること、心の中のこともしっかりと見抜く力が透析看護には必要だと、これからも職員へ伝えていきます。
- 後藤
- 偕行会セントラルクリニックでは、グループ病院である名古屋共立病院には送迎の待ち時間で行くことができ、画像診断や検査、治療後には手厚いフォローが受けられます。こういった情報を患者様に伝え、患者様自身が合併症対策に対してより前向きになれるよう、取り組んでいきます。合併症対策の中でも重要視していることは認知症対策です。患者様やご家族にとって、認知症の診断をされることは怖い気持ちもあると思います。もの忘れ外来を受診することは難しくても、近しい人になら気軽に相談できますよね。まずはクリニックのスタッフがご自宅での困りごとを聞き、相談しやすい環境づくりを進めます。また、患者様の些細な変化に気づけるのが看護師です。一日おきに患者様をみているので、小さな変化も一番に感じられます。例えば、毎日きちんとお化粧をしていた方が、ある日お化粧をしなくなったり、いつもと少し違っていたり。スタッフには、透析に関わること以外でも気になる症状があれば認知症の検査を勧めるように伝えています。患者様が少しでも良い透析生活を送れるクリニック作りを目指して、これからも励んでいきます。
※1. ACP…アドバンス・ケア・プランニング(ACP)。将来の医療やケアについて、患者様およびご家族、そして医療チームが一緒に考え、患者様の意思決定を支援すること。