診療科・部門

集束超音波治療センター

概要

手足、頭、声などのふるえは、さまざまな理由で起こり、生理的現象によるものから病気の症状のひとつとして現れるものまであります。ほかの病気など特定の原因がなく、ふるえのみを症状とする疾患を本態性振戦(ほんたいせいしんせん)といいます。内服治療で効果が十分でない場合に手術が行われていましたが、2019年6月より新しい治療法として保険承認され最近一躍注目されているのが、集束超音波治療(Focused ultrasound therapy:FUS)です。FUSは手術を必要とせず、頭蓋の外側から照射した超音波を頭内部の一点に集中させ、ふるえの原因となる部位を熱凝固させる治療です。現在、国内には本治療機器が12台設置されておりますが、今まで大きなトラブルが発生した報告はなく、極めて侵襲が少なく安全性の高い治療法として期待されています。
このFUS治療を行うことで、ふるえで困っている方々が通常の生活を取り戻せる可能性があります。しかしまだ、本態性振戦という病気があることも(このふるえは、病気ではなく、歳のせいだとか、緊張しすぎるからだとか思ってしまっている)、その治療法としてFUSがあることも、まだまだ十分には知られておりません。まず我々はこの病気の診断とFUSによる治療に関する情報を、広く伝えていくことが大切であると考えています。

特徴

本態性振戦は、パーキンソン病などのほかの病気との鑑別に注意が必要です。ふるえの原因がほかの病気であった場合には、治療をしても効果が得られない可能性があります。そのため、複数の医師で診察して確実に診断すること、そして、治療効果が十分に期待できる患者さんに対してFUSの治療をするということが大事です。当院では、パーキンソン病との鑑別に用いられるドーパミントランスポーターシンチグラフィ(DaT SPECT)という特殊な検査を、連携先である名古屋大学医学部附属病院の協力のもとで行っています。また治療法に関しても、FUSだけでなくDBS(脳深部刺激療法)やRF(高周波凝固法)などの治療も選択肢に含め、合同でカンファレンスを実施した上で適応を決めています。名古屋大学医学部附属病院との連携により、治療の妥当性や患者様が希望する治療の適応となるかどうかをより正確に判断できると考えています。
※薬物治療の効果が低い方が治療の対象です。
※治療の効果には個人差があります。
※本態性振戦と診断されていても、頭蓋骨の性質や形状、既往歴等により医師が適応外と判断した場合には、治療ができない場合があります。
※2019年6月1日より健康保険での診療が可能にとなりました。
※この治療法に関するリスクや副作用などについては、名古屋共立病院までお問い合わせください。

主な対象疾患と治療法

本態性振戦の治療としては、最初から集束超音波治療を選択するということはありません。ふるえによる日常生活への支障がない場合は、日常生活の工夫に関する指導などを行います。そのうえで、患者さんがふるえで困っている場合には、症状の程度やふるえの部位などに応じて治療を行います。治療を行う場合、まずは薬を投与して様子を見ます。薬物療法で用いられる代表的な薬剤は、交感神経遮断薬や抗てんかん薬などです。リラックスすることによる症状の軽減を目的として、精神安定剤や抗不安薬を投与する場合もあります。薬物で改善が見られない場合に手術を検討します。手術には高周波凝固術(Radiofrequency Thermocoagulation:RF)と脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)の2つがあります。高周波凝固術(RF)は、脳の視床腹側中間核(Vim核)に熱凝固針を刺して高周波で熱凝固させる方法です。脳深部刺激療法(DBS)では、同じ部位に対して電気刺激を与え、体の動きに関わる脳内の信号を調整します。いずれの場合も頭蓋骨に穴を開ける外科的な手術が必要となります。一方、集束超音波治療(Focused ultrasound therapy:FUS)は手術を必要とせず、頭蓋の外側から照射した超音波を頭内部の一点に集中させ、ふるえの原因となる部位を熱凝固させる治療です。
2019年6月より、本態性振戦に対して保険承認され、さらに2020年9月より薬物治療で難治性のパーキンソン病による震えの治療も追加承認され、新しい治療法として注目されてきています。現在、全国の12の施設に設置されていますが、中部地区では、当院が唯一の設置施設です。

治療実績

年度 治療件数
2017年 10名
2018年 16名
2019年 17名
2020年 38名(10月末)
多職種チームで患者様の治療に尽力します。