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人工関節センター
肩・膝・スポーツ関節鏡センター

肩の痛みについて

多くの方が悩まれる肩の痛みですが、ただの疲れや肩こり、年齢のせいと思って放置していると重大な疾患を見落とす可能性があります。突然の肩の痛みやときどき痛む場合でも長期間続く痛みにお悩みの方は一度専門の医療機関への受診をご検討ください。
  • なにもしていなくても肩、腕が痛い(腱板断裂・四十肩)
  • 腕が上がらない(腱板断裂・四十肩)
  • 腕は上がるが力が入らない(腱板断裂)
  • 夜、痛くて目が覚める(腱板断裂・四十肩)
  • 洗濯物を干す時に痛い(腱板断裂)
  • エプロンの紐を縛る時に痛い(四十肩)
  • 肩が抜けそうな感じ、嫌な感じがする(不安定症・関節唇損傷)
  • ボールを投げると痛い(野球肩) 肩の痛み
このような痛みを感じたら、早めの受診をおすすめいたします。
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五十肩
肩に痛みがある40歳以上の人で、整形外科を受診する人は20%程度と少なく、特に40・50代の受診率は低いと報告されています。
また整形外科が専門の医療機関でも部位や疾患によって専門性が異なるため、一般の整形外科で五十肩と診断されていた患者様が専門医の診断では実は腱板断裂(肩の腱が切れた病気)であったというケースもあります。
腱板断裂は好発年齢や症状が五十肩とよく似ているため、五十肩と診断され放置されてしまう場合があります。そのまま長年に渡り放置すると、断裂を生じた筋肉が萎縮し、腱板断裂を修復する手術が困難になります。
そのため肩の痛みは専門医による正確な診断が極めて重要です。
腱板断裂
加齢とともに腱板が弱くなり、骨がぶつかることで腱板が削れ、断裂した状態です。時間が経つにつれ悪化することがありますので、保存療法(服薬や注射など)や手術など適切な治療が必要です。
腱板が縫える状態であれば関節鏡手術にて修復を行います。 腱板が縫えないような状態であれば関節を人工関節に置換する手術を行います。

治療方法

■保存療法
安静にして痛み止め薬の投与や関節内に炎症を抑える薬を注射したりして痛みを抑えていき経過をみます。
痛みが落ち着いてきたら運動療法によるリハビリテーションを開始します。

■腱板断裂修復術
切れた腱板(筋肉)を小さなカメラ(関節鏡)を使用して縫い付ける手術です。

■関節唇断裂修復術
関節鏡を使って、はがれた関節唇を縫合する手術方法です。

■人工肩関節置換術
骨の変形が進んでしまっている場合や、縫えない程大きく腱板が切れている場合に金属製の人工関節に入れ替える手術です。

■リバース型人工肩関節置換術(RSA)
2014年にフランスから日本へリバース型人工肩関節が導入され、腱板を縫うことが難しい場合でも肩を上げる治療をおこなうことが可能となりました。
この治療法は従来の人工関節の凸凹を反転させた専用の人工関節で、以前は腕を挙げることをあきらめざるを得なかった患者様も、腕を挙げることが可能になる手術です。
当院では事前に撮影したCTのデータを元に3D画像を作成し、患者様個々に最適なインプラントの選択を行い、より安全に手術をするよう努めています。
  • 腱板断裂修復術で修復不可能な腱板広範囲断裂
  • 腱板広範囲断裂を伴う変形性の肩関節症
  • 高齢者の骨折
  • リウマチ肩
  • 骨折後の変形治癒 などが適応となります
RSAは肩関節における豊富な知識と熟練した技術が必要な高度な手術です。
日本整形外科学会により、この手術をおこなえる医師は肩関節における治療に関する豊富な知識を持ち、使用トレーニングを受講し、認定を得た医師に制限されています。(2020年3月時点)
当院の山田医師はこのトレーニングを受講し認定を受けております。
肩の痛み、腕を挙げることが困難とお悩みの患者様は、山田医師にご相談ください。

膝の痛みについて

膝の痛みの原因は様々ありますが、多くの場合で軟骨を守る半月板の損傷から痛みが生じます。この段階を我慢すると半月板がすり減って小さくなったり、軟骨同士が直接ぶつかってすり減り、骨を守るクッションの役割を果たすことができなくなったりします。症状がさらに進むと、大腿骨とけい骨の骨同士がぶつかるようになり、その結果、レントゲンでは見えない小さな骨折が無数に生じ、痛みが徐々に増していきます。しばらく安静にしていると痛みは治まりますが、構造自体は改善しないため痛みが幾度となくぶり返します。そしてその間隔が徐々に短くなっていき、最終的には常に膝の痛みを抱えるようになるほか、潰れて出っ張った骨が膝の動きの邪魔をして膝の曲げ伸ばしも難しくなっていきます。
「年のせいだから」とあきらめるのではなく、早めに専門医へ受診し膝の状態に最適な治療法を選択することが大切です。早期発見によって、リハビリを中心とした保存治療で症状の改善ができるほか、手術になったとしても身体への負担が少ない治療を行うことも可能です。

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保存療法とは
保存療法には、生活指導・理学療法(リハビリテーション)・装具療法・薬物療法などがあり、これらを組み合わせて行われます。 手術療法は、保存療法で効果が得られない場合に選択されます。

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【生活指導】
つえを使って膝の負担を減らします
体重を減らし膝の負担を減らします(ダイエット)
 
【薬物療法】
消炎鎮痛薬、湿布などを使用する
関節内注射(ヒアルロン酸の注射)

【理学療法(リハビリテーション)】
温熱療法を行うことで痛みを緩和します
運動療法を行うことで筋肉を鍛え、体のバランス改善や膝の安定性が増し痛みが減少します
 
【装具療法】
足底装具を装着し、膝の体重のかかる位置を変更します
サポーターによって膝の安定性を向上します
保存療法で症状が完全に改善されれば良いですが、痛みが残っているのに少し良くなったからと保存的治療で頑張るのも考えものです。幾度も痛みが再発しその期間が短くなってくることがあります。
約3か月~半年間にわたって保存療法を行ってもひざの痛みなどの病状が改善されない場合には、手術療法を検討しはじめても良いでしょう。限界まで膝を酷使し最終手段である人工関節置換術を受けるよりも、まだ膝の状態が良い状態で身体に負担の少ない手術を検討することが可能です。

【関節鏡視下手術】
膝関節に関節鏡と呼ばれる管状のカメラで関節内部をみながら、痛みの原因になっている部分の治療を行います。
関節の周囲に2~3箇所の7mm程度の小さな穴を開けて生理食塩水にて満たし、関節鏡と処置器具を挿入し半月板や軟骨、靱帯などの損傷部位の修復や摘出を行います。
手術の傷跡も小さく、良い組織を壊すことなく、早期に社会復帰ができます。関節の変形や損傷がそれほどひどくない場合に行われます。

【前十字靭帯損傷(断裂)について】
スポーツ活動中によって受傷することが多く、相手との衝突など接触プレーで膝関節に強い捻りの力が加わり受傷する(接触型の損傷)こともありますが、ジャンプ後の着地動作や、動作中の急な切り返し動作(非接触型の損傷)、など相手との接触がなくても起こります。受傷後は靭帯が損傷することで、出血し腫れることが多く、膝の痛みや膝の曲げ伸ばしが行いにくくなる症状が出ます。

【前十字靭帯損傷後の2次的損傷】
受傷の急性期を過ぎると痛みや腫れが減り、日常生活は支障なくできるようになるため、様子を見ようと思うかも知れません。しかし膝は非常に緻密な動きをしている関節なので、症状がなくなったからといって放置すると、本人が気づかない異常な動きをすることで、あとから半月板に損傷が発生したり、関節内に水が溜まりやすくなります。水が溜まると軟骨が徐々に傷み、文献によれば10年で50~63%に関節の変形が見られると報告されています。
また靱帯が切れ不安定な状態の時にスポーツなどある一定の動きをすると、知恵の輪が外れるように膝が外れるような膝崩れ(Giving
Way)という現象が生じるケースが多くみられます。
そのため受傷時には早期に専門医のいる病院にて靱帯の状態の確認し、症状を適切に把握することが重要です。
【前十字靭帯損傷の治療】
前十字靱帯は完全に切れてしまった場合には自然修復することはないといわれています。そのため、治療は手術による靱帯再建術が必要になります。前十字靭帯再建術は、自分の組織(膝屈筋腱、膝蓋筋腱)を採取し、関節鏡を用いて膝の中を確認しながら、前十字靭帯の代わりとして移植する方法です。手術の傷は関節鏡を入れるための穴を数か所と腱を取る際の数cmの1か所必要です。半月板損傷があれば同時に手術が可能です。
【リハビリテーションについて】
前十字靱帯再建術のリハビリテーションはとても重要です。日常生活やスポーツ競技に復帰するためには、患者様自身の積極的な参加が必要です。受傷後から術前までも筋力を落とさないように、炎症を管理し適切なリハビリテーションを継続して行っていきます。
手術後翌日から松葉杖や装具を使用し、適切なリハビリテーションを開始していきます。
入院は平均3週間程度で、入院中は日常生活に戻るために膝の動きの獲得や歩く練習をしていきます。退院後は通院しながら膝の動きを拡大したり、筋力のトレーニングを行い機能改善していきます。手術後3~4か月でランニング開始、手術後6か月以降はスポーツ復帰に向けたトレーニングを開始していきます。接触のないプレーで怪我をしていた場合には、再度同じ怪我を繰り返さないために、特に筋力の向上や怪我しやすい癖の修正が必要になります。専門の理学療法士がフォームチェックを行いながら運動復帰に向けた運動を進めていきます。主治医とともに膝の状態の経過を確認しながら、術後おおよそ8か月くらいでスポーツ完全復帰を目指していきます。
【高位脛骨骨切り術HTOとは(O脚矯正術)】
長年膝を使ったことで内側の膝関節に偏った過重なストレスがかかり、その結果O脚となることで膝の内側ストレスが強まり、半月板、軟骨、軟骨下骨が壊れていきます。場合によっては小さな骨折が生じることもあります。
脛骨をくさび状に切ることによりO脚を矯正し、膝の外側に荷重を移動させる手術です。患者様の膝関節が温存されますので、スポーツや農業などの重労働へ復帰が期待できる術式です。
変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなど、年齢を問わず活動性が高い患者様は検討することをおすすめします。
現在一般に使用されている人工膝関節の耐用年数は15~20年程度と想定されております。そのため再手術を避けるために65歳よりも若い患者様には、この「高位脛骨骨切り術:HTO手術」を検討します。
■メリット
人工関節置換術と比較すると侵襲が少ない手術です。自分の関節を温存または再生するため、手術後の日常生活に対する制限が比較的少なく、スポーツや正座が可能になる例が多いです。
 
■デメリット
  • 骨が癒合するまで時間がかかる
  • 手術後2~3週間の期間免荷(荷重制限)が必要
  • 1年以降後、抜釘手術(金属プレートを抜く)が必要
【人工膝関節置換術(TKA)】
人工膝関節置換術とは、その名のとおり変形性膝関節症により壊れてボロボロになった関節を10mmぐらいうすく切り落とし取り除いて、人工関節に置き換える手術法です。同時に乱れた脚の形(O脚・X脚)を改善させます。
保存療法で膝痛が軽快せず、骨切り術では改善効果の見込みが期待しにくい場合に最終的に人工関節手術適応を検討します。具体的には15分間の歩行ができなくなった、階段の昇り降りができなくなった。膝痛のため外出が少なくなったなどの日常生活に支障をきたすようになったときに検討します。
■人工膝関節とは
関節の滑らかな動きを再現できるよう大腿骨部と脛骨部の本体は金属製で、脛骨部の上面と膝蓋骨の表面は耐久性に優れた硬いポリエチレンでできおり、これが軟骨の代わりとなり膝の動きを再現します。

■人工膝関節の役割
  • 膝の痛みを取り除く
  • 膝の痛みや変形により行いにくくなった膝の曲げ伸ばしを可能にする

■メリット
  • 痛みがなくなり、曲げ伸ばしが楽になり快適な生活が送れるようになる
  • 高度なO脚やX脚などが改善される

■デメリット
  • 激しい運動、重労働はできない
  • 正座ができない場合が多い

股関節の痛みについて

日常生活で、足の爪切りや靴下が履きにくくなったり、和式トイレ使用や正座が困難になったと感じることはありませんか?また股関節の痛みのため長時間立っていたり、歩いたり、ちょっとした階段がつらいなどの症状はないでしょうか?
股関節は、「立つ」「歩く」「座る」など日常生活の基本動作を司る大変重要な関節で、病気が一度発症すると、静かに進行していくため、痛みや歩きにくさなど、脚の付け根の部分に異変が現れた時はなるべく早く診察を受けることが大切です。
変形性股関節症とは
股関節の病気にも様々な種類がありますが、外傷などの要因がなく痛みがある場合、多くの場合で変形性股関節症が疑われます。
変形性股関節症の多くは、先天性の股関節脱臼や寛骨臼形成不全症といった幼少期の病気や発育障害の後遺症による骨形成の異常、長年の負荷で軟骨がすり減ることで、骨がこすれ、痛みや運動障害が発症するケースです。
そのまま放置し股関節の軟骨がさらに損傷や摩耗を起こすと、骨同士が直接あたるようになり、ひいては骨の変形を引き起こし、動かせる範囲に制限が出てきます。軟骨の摩耗は関節炎を起こすことが多く、股関節を動かしたり体重がかかるたびに傷むようになります。また骨同士に小さな骨折を生じ骨が腐ることもあるため、早めの対応が重要です。
治療には保存療法と手術療法があります
保存療法には運動療法・温熱療法・薬物療法などで症状をやわらげる治療を行います。股関節の周囲の筋肉が固く可動域が狭くなっている場合は、それを改善し適切な動きに誘導する運動療法を行います。痛みが強い場合には炎症をおさえる薬を内服する薬物療法を併用します。保存療法の内容は患者様の状態を正しく診断して最適な方法を選択します。
手術療法は主に人工股関節置換術が選択されます。
人工股関節置換術とは、股関節のすり減った軟骨と傷んだ骨を取り除いてチタン合金やポリエチレン製の人工関節に置き換える手術です。人工関節によって今までの痛みが緩和され、股関節の動きが良くなることが期待されます。
低侵襲手術
当院での人工股関節置換術は軟部組織を温存するSuper Path(The Direct Superior Portal Assisted Total Hip Approach)という低侵襲手術法にて行っています。この手術は、大切な腱を切断したり、重要な筋肉を伸ばしたり傷つけたりすることなく、股関節を一度も脱臼することなく手術を行うことができます。術後その日のうちに歩行練習が可能で、従来法では脱臼を誘発する危険肢位(その動きをすると脱臼してしまう動き)がありましたが、この手術法では手術中脱臼させることがないので当然術後の脱臼の危険性が非常に低いため動きの制限はありません。
そして、手術による傷は6cm~8cmと従来法に比べ小さく、筋肉及び腱に対する損傷が少ないため術後の痛みも最小限かつ動きの制限もないので、リハビリテーションが早く進み入院期間も短く済みます。

従来法では青線部分の筋肉・ 腱を切断する必要があります。
従来法は人工関節を挿入するために腱や筋肉を切断したり伸ばしたりするため、脱臼を起こしやすくなります。

低侵襲手術では○で囲んだ部分の筋肉・ 腱を温存します。
この低侵襲手術では筋肉を切らずに温存するため脱臼の危険性が非常に低い(注:このアプローチ法はすべての患者様に適応されるわけではありません。)